| 朝日新聞 論あいち ◆21世紀の環境と化学物質 「便利な物 使用後が肝心」 |
| 井口泰泉氏(51) 岡崎国立共同研究機構統合バイオサイエンスセンター教授 |
| 化学物質に関運して多くの話題が新聞紙上をにぎわしている。認可されていない物質が香料に使われたり、輸入野菜からも認可されていない農楽が検出されたりしている。一方で、200種類もの農薬の残留息準の作成や、室内空気中の化学物質の総量規制、建材に合まれる化学物質の規制など、ヒトの健康影響を守る取り組みが進んでいる。化学物質と言えば、内分泌撹乱物質(環壇ホルモン)は、ひところはパニックのように報道されたが、化学物質による野生生物を合めた環境を守るという観点は乏しい。 内分泌撹乱物質報道後の問題を解説し、化学物質と環境について考えてみたい。 有機スズによる巻き貝の雌の雄化、女性ホルモン様物質によって魚類の精巣中に卵が発生することなどはよく知られている。ヒトでは、精子数の減少や子宮内膜症の増加などが懸念されているが、いまだに因果閑係は不明である。 環境省と国土交通省は98年から、全国の環境実態調査を行った。環境省は昨年と今年、メダカを用いた試験結果から、世界に先駆けて界面活性剤の代謝物であるノニルフェノール、オクチルフェノールのリスク評価を行い、両物質は魚類に対して影響を及ぼす可能性を指摘した。 各国政府や経済協力開発機構(OECD)は、内分泌撹乱物質の試験法の開発を続けており、世界保健機関(WHO)は現状を報告書にまとめた。厚生労働省は昨年、食品用器具・容器包装に、軟らかさを持たせるために使われている可塑剤の中で、フタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)とフタル酸ジイソノニル(DINP)について、毒性の観点からリスク評価を行った。 市販の弁当から一日耐用摂取量を超える高濃度のDEHPが検出され、かなりの部分が塩化ビニル製手袋に由来することが判明した。乳幼児の歯固めやおしゃぶりには、可塑剤としてDINPが多く合まれ、極端な条件を想定すると一日耐用摂取量近くにさらされる可能性がある。このため、食材に直接触れるような容器包装材への使用や、なめることを目的とした玩具へのこれら可塑剤の便用が禁止された。 化学物質無しでは健康的な生活は望めないともいえるが、21世紀には化学物質の便利な点のみならず、負の観点も十分に考慮しなければならない。製造から分解、再生、廃棄までの流れを、経済流通の中で作り上げる必要がある。 米環境保護庁のように、どの動物にでも影響を及ぼす物質は人にも影響を及ばす可能性があるとする考え方も必要である。影響しない量の物質でも数種類組み合わされると影響が現れるとの報告もある。環境中への化学物質の放出を減らす取り組みは欠かせない。 環境と人と生物のかかわりを大切にすると共に、失った自然の回復は困難であること、環境に放出した化学物質は回収できないことを認識したうえ、次世代を担う子供たちには自然とのかかわりを十分体験させることが必要である。 |
| 朝日新聞 論あいち 2002.10.12 |
